NTM(Neoclassical Tearing Mode)
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NTM(Neoclassical Tearing Mode、新古典的テアリングモード)は、トカマク型核融合装置などの磁気閉じ込めプラズマで発生する磁気不安定性の一種です。このモードは、磁気島を形成し、プラズマの閉じ込め性能を悪化させる原因となります。 通常のテアリングモード(Tearing Mode)は、プラズマ中の電流密度の不均一性や抵抗性によって発生しますが、NTMはこれとは異なり、ネオクラシカル効果と呼ばれるプラズマの特性に起因します。 基本概念の整理
磁気島
磁気島は、プラズマ中の磁力線が再接続することで形成される島状の磁場構造です。この構造では、プラズマ中の熱や粒子が磁力線に沿って輸送され、閉じ込め性能が悪化します。 通常のTearing ModeとNTMの違い
1. 通常のTearing Mode
通常のテアリングモードは、以下の要因で発生します:
磁気閉じ込め装置のプラズマ中で、電流密度が不均一になる。 プラズマ中の磁力線が安定を保てず再接続し、磁気島が形成される。 特徴:
抵抗性(Resistive):プラズマ中の有限な抵抗がモードの発生と成長に寄与します。 発生条件:プラズマが局所的に不安定であること(例:外部の摂動磁場が共鳴する)。 2. NTM(Neoclassical Tearing Mode)
NTMは、通常のテアリングモードと比べ、ネオクラシカルな性質に依存しています。 プラズマ中で粒子が磁気トラップされる(磁気面に沿った運動ではなく、トラップされた状態で振動する)ために生じる輸送現象や電流特性。 NTMは、プラズマ中の圧力勾配(β)が高くなることで発生しやすくなります。
特徴
発生のきっかけとして、小さな外部摂動や他の不安定性が必要。
自己維持型(Self-sustaining):一度形成された磁気島がプラズマの電流分布に影響を与え、自らの成長を助長します。 なぜNTMが重要なのか?
1. 閉じ込め性能の低下
磁気島が形成されることで、プラズマ中のエネルギーや粒子が漏れやすくなり、核融合装置の効率が大幅に低下します。 2. 破壊(Disruption)につながる可能性
大きな磁気島はプラズマの安定性全体を損ない、装置の破壊的な動作を引き起こすリスクがあります。 3. 実験装置での観測
NTMはITERのような次世代核融合装置において、運転領域での大きな課題となっています。 NTMの発生メカニズム(簡略版)
1. 摂動の開始
プラズマ中に小さな摂動が発生します(外部磁場や他の不安定性による影響)。 2. 磁気島の形成
摂動が磁場の再接続を引き起こし、磁気島が形成されます。
3. “Bootstrap電流”の喪失
磁気島の内部では、プラズマ圧力勾配が低下するため、ネオクラシカルなBootstrap電流(プラズマの圧力勾配によって自然に生じる電流)が減少します。 4. 磁気島の自己維持
圧力勾配の低下によりさらなる電流の損失が進み、磁気島が大きく成長します。
NTMの制御方法
磁気島の中心に局所的に加熱を行い、圧力勾配を回復させることで磁気島を抑制します。 2. 外部コイルによるフィードバック制御
磁気島をリアルタイムで検出し、外部コイルを用いて適切な磁場を加え、成長を抑制します。
3. 最適な運転条件の選択
プラズマの圧力(β値)を適切に調整することで、NTMの発生を回避します。 まとめ
通常のTearing Modeは主に抵抗性によって引き起こされる局所的な不安定性です。
NTM(Neoclassical Tearing Mode)は、高ベータ運転時のBootstrap電流の損失が原因で発生する不安定性です。 両者とも磁気島を形成し、プラズマの閉じ込め性能を低下させますが、NTMはその自己維持特性から特に核融合装置の運転において重要な課題とされています。 NTMの理解と制御は、次世代核融合装置の安定した運転を実現するための重要な研究分野です。